幻立喰・ソ

第49回「三大巨頭を考察する(ふりをする)」

 長い学生の夏休みもそろそろ終盤です。サラリーマンの夏休みといえば、お盆ウィークの3日間+土日(2014年なら13〜17日)あたりです。普段は地獄の通勤電車もガラガラと思いきや、電車も休日ダイヤで本数が減ります。ゆえに朝いつもよりちょっと空いている程度で得した感まるでなし。電車は待っていればやってきますが、困るのが昼食。お盆も出勤の仕事中毒患者たちは昼食難民と化すのです。
 その受け皿として活躍するのが、年中無休開いてて良かったのコンビニと、大手ファストフードチェーン店。暮れと正月もしかりです。普段は敬遠気味な立喰・ソ中毒患者達も、大手チェーンにやむなく吸い込まれ、ぶつぶつ言いながらもすすってみると、これがけっこうというか、おいしいじゃないのと再認識するのです。つまり、盆暮れ正月は年に2回、一般店のありがたさと、大手チェーンの実力と懐の深さを同時に思い知らされる、立喰・ソ人にとって恒例行事でもあるのです。

 ところでみなさん、三大巨頭(BIG THREE)といえば、何を思い浮かべますか?
 アメリカの3大ネットワークCBS、NBS、ABC? ヤルタで会談したルーズベルト、チャーチル、スターリンの3おっさん? さんま、たけし、タモリのお笑いビッグ3?(とは言っても、もうお笑いじゃないじゃん……) 
 キャンディーズのランちゃん、スーちゃん、ミキちゃんは3人娘。マーライオン、人魚蔵、小便小僧は3大がっかり。ピラミッド、万里の長城、戦艦大和(ダイワじゃないよ。ヤマトだよ。同型艦の武蔵はどうなるの?)は3大バカで、ちょっと違いますが、興味のある方はウイキ先生でどうぞ。山ほど出ています。
 ちなみに3大うどん(讃岐、稲庭、水沢)はあっても、3大そばはありません。身内で覇権争いを繰り広げ、蒋介石と毛沢東のように内戦を続けて自滅すればよろしい。しなかったけど。その点、我がソは盤石の一枚岩。「以後、ウ相手にせず」などと余計な宣言をして、三大ウが共闘して、ソに立ち向かうことのないよう願いたいものです(元ネタ→国共合作)。
 立喰・ソチェーン店の三大巨頭といえば、最大規模を誇るM代F士そば、打ちたて、茹でたて、揚げたての3たてで席巻したK諸そば、自家製麺でにょきにょき成長中のYで太郎ということで異論はありませんね。西の方からは「Mを忘れとるやんけ、しばくど!」という声も聞こえますが、今回はデータが豊富な東京23区に限ってのお話ということで完全に無視いたします。
「ちょっと〜、ジロジロ見てるんじゃないわよ! こちらで検索してほしいんじゃないんだから!」(←突然すみません。ツンデレです。違いますか? 今回はこっち系要素を各所にちりばめました。が、素養がないので完成度は荒めです。ご了承ください)


時計台

はりまや橋
日本三大がっかり名所のトップは、札幌の時計台。勝手にまわりがビルだらけになって、勝手にガッカリされてもねえ。(2014年1月撮影) 2番手、土佐の高知のはりまや橋は、名所に値するガッカリ度ですが、坊さんがかんざし買ってただけですから。で、最後のひとつはどこ?(2014年6月撮影)

 まずは3大巨頭を解析してみましょう。いちいちイニシャルで書くのもめんどくさいので以降は、M代F士そばをA、K諸そばをB、Yで太郎をCとさせていただきます。3つくらいですから覚えられますね。私がちゃんと覚えれる(ら抜き言葉)かどうか、劣化著しい脳内メモリ(第20話参照)ゆえ一番心配です。

 まずはA。展開するのはダイタンフード(おいおい、いきなり実名かよ、とツッコんでください。でも、いいんです。店舗名ではないので=ご都合主義)で、さらにダイタン企画、ダイタン食品、池袋ダイタンフーズ、ダイタンイート、ダイタンミール、ダイタンホールディングス、ダイタンキッチンを加えた8社で構成されます。海外展開等のダイタンホールディングスと店舗用天ぷらの製造、配送を行なうダイタンキッチン以外の6社が各店舗を運営しています。
 Aツウな人ならば例えば渋谷では、渋谷南口店はダイタンフード、道玄坂店はダイタンイート、渋谷東口店は池袋ダイタンフード、明治通り店はダイタン食品、笹塚店はダイタン企画と経営主体を熟知し、その日の気分によって食べ分けるとか(未確認)。公式には味は同じということになっていますが、そこは気分を大切に。
 ちなみに第一号店は1966年の渋谷店ですから、もう少しで50年周年。記念企画を期待しましょう。第一号店は109の斜め前で現在も盛業中です。社長さんは立喰・ソに一生をかけた有名人で、作詞家もやっています。Aでは社長が作詞したCDも売っています。アルバイトの時給は1100円〜。

 次は、立喰・ソに本格的なそばの要素を持ち込んだ革命児のB。今では打ちたて、茹でたて、揚げたてもそれほど珍しくもありませんが、茹で麺、作り置きが当たり前すぎた立喰・ソにやってきた黒船でした。展開するのは三ツ和で、全店がK諸そば事業部の直営店のようです。第一号店は1974年の京橋店。現在の京橋店と同じ場所かどうかまではわかりませんが、店舗一覧の一番最初に出てくるので、そうではないかと思います。今年40周年ですが記念企画は? アルバイトの時給1000円〜。

 最後は急激に店舗が増えたC。挽きたて、打ちたて、茹でたての粉から自家製麺がウリです。信越食品グループが展開する直営店と、Yで太郎システムグループのフランチャイズ店があるようです。九州などの一部を除き、両グループのメニュー、価格はほぼ同じ。味に違いはあるのでしょうか? 私にはわかりません。持ち帰り弁当店から始まり、立喰・ソの第一号店は意外と最近な1994年に開店した湊店(中央区)です。今年20周年のトッピング無料券を配っていましたが、もらい損ねました。アルバイトの時給は?

 と、「よく調べたね」とお褒めのひとつもいただけたら幸いですが、すべて公式サイトに出ています。便利な時代になりましたが、その分人間関係が希薄になっているのです。昔なら電話をかけたらい回しにされ、やっとの思いで担当さんを紹介してもらい、うかがって、運が良ければソの一杯も御馳走になって、さらにウマが合えば飲みに行って、よせばいいのに立喰・ソ論を展開して大喧嘩になって、そのまま疎遠になるというのが一般的でした(話の添加物85%)。

A B
C みなさんご存知、立喰・ソ界の三大巨頭。お盆でお休みの飲食店ばかりの中、一部店舗を除き平常通り朝から営業しておりました。おつかれさまです。AとCは都内だけでなく首都圏や地方にも店舗があります。ちなみにCの九州にある店舗は料金もメニューも異なるようです。(撮影年いろいろ)

 と、三大巨頭の概要に触れたところで、下の表をご覧ください。おなじみ無駄に数字をこねくりまわす、一見有用で実は何の意味もない数字の羅列です。
 左から、東京23区の面積と人口(※1)、ABC三大巨頭の店舗数(※2)とその総計、チェーン店以外の一般店の店舗数(※3)、ABC三大巨頭と一般店の総計、一般店1店当たりに対する三大巨頭の比率、三大巨頭と総店舗数に対するの人口、面積の比率の順です。
 いままでこれほど東京都の立喰・ソを一目瞭然にしたデータが存在したでしょうか。したかもしれませんが、誰も必要としていないので表に出なかったのでしょう。

 一口に東京23区とはいえ、ご覧のように地域格差が著しいのがお解りいただけますか。わからない? もう! おにいちゃんには、揚げ玉あげないんだから。ぷんぷん(←妹キャラ?)。


表
小さすぎて見えないって? だったらクリックすればいいじゃない。コピペできないって? 画像なんだからしょうがないでしょ。表を造るのはめんどくさいの。もう! ホントにいつまでたっても世話が焼けるんだから。しょうがないから、ずっと私がそばにいてあげる。

 まず目に付くのが千代田区、中央区、港区、新宿区の4区だけでなんとまあ23区総店舗(※4)の半数近くを占めている欲張りさんということ。面積もそれほど広くないので、立喰・ソ密集度は100〜400mに一軒という、犬が歩かなくても立喰・ソに当たる日本一の立喰・ソ密集地帯です(たぶんほぼ間違いなく)。
 原因のひとつがBの千代田区、中央区への超偏向重点攻勢ですが、多数のオフィス街をかかえる地域であり、元々一般店も多い地域ですから。逆に100メートル四方に一軒と言われると、そんなに少ないかなとも思ったりします。それに比べ、立喰・ソ不毛地帯の世田谷区ですら5kmなのに、練馬区はさらに突出して9km、14万人に1件とは……つらくはないさ、この東京立喰・ソ砂漠状態です。

 面白いのはAとCの関係です。まるで話し合いをしたかのように、Aが多いところはCが少なく、Cが多いとAは少ないのです。その理由を取材するのが本来のジャーナリズムですが、この駄コラムは、ジャーナリズムとは縁もゆかりも、伊東ゆかりもありませんので、誤解なきよう。一青窈。


※1
出所はもちろんウイキ先生です。

※2
2014年8月現在、ABCの各公式サイトで数えました。数え間違いがあったら、ごめんなさい。

※3
駅構内の駅ソは除きました。なぜかと言いますと面倒だからです。誤解しないでください、めんどくさいのではなく、例えば、日暮里駅のように荒川区と台東区の境界にあり、駅ソはどの区に属するのかの資料が発見できないからです。まあ、世間的にはめんどくさいから割愛したとも言えます。
ちなみにR文そばとかSエヒロとかTよしまなどは、心情的にもチェーン店とは一線を画しているので一般店扱いとしました。

※4
各数値は2014年4月現在のもので、一般店数は私が把握している数値ですから、実際の数値とはたぶん異なっているでしょう。が、大きな誤差はないと信じたいです。よくよく考えるまでもなく、この数値には三大チェーン以外のチェーン店と、駅ソは含まれていないので正確ではありませんね。ごめんなさい。そのうちヒマを見つけて、こつこつ修正します(←二度と手を付けないときの常套句)。


 さらに面白いのは、まんべんなく展開されているように見えながら、三大巨頭の出店がゼロという、「スナバはあってもスタバがない鳥取県」状態の区が、3つもあるという事実です。鳥取にはスタバが出来るようですが、この3区に三大巨頭が進出する日は来るのでしょうか。
 その中でも特に意外なのが目黒区。山手線に面しているのに、まさかないとは……やはりソよりさんまでしょうか。練馬区もソよりも練馬大根……こういうことばかり言っていると、真剣に怒られます。練馬変態クラブの人に(←わかるかな、わかんねえだろうな〜by松鶴家千歳)。
 この3区は立喰・ソをあまり食べないかと思えば、荒川区に一般店はそこそこあります。つまり、地元密着型でチェーン店が入り込む余地がないと解析します。さすが区役所敷地内に「呑むなとは言わんが、泥酔したら来るんじゃねえぞ」的な看板があるスパルタン荒川区の面目躍如です(なにが?)。


荒川区役所

荒川区役所
荒川区区役所は広い公園に囲まれています。各種オブジェと警告看板が同居しているカオスです。(2010年11月撮影)

 チェーン/一般店は、一般店1店当たりに対するチェーン店舗数です。あほみたいにチェーン店が多い千代田区、中央区と寂しいほど一般店の少ない渋谷区以外は、なんとか一般店ががんばっている姿が目に浮かび、ご同慶のいたり……かと思えば、よくよく考えれば、三大巨頭以外のチェーン店がぽっかり抜けているわけで、実際の比率は逆転の可能性もあるかもしれません。
 チェーン/人口と、総店舗数/人口はそれぞれの1店舗当たりの人口。区民全員が自区の立喰・ソに殺到したときの一店舗当たりの人数ということです。面積が少ないのに店舗数が多い千代田区、中央区、港区が突出して空いているような印象ですが、いわゆる昼間の人口はバカみたいに多いので、昼食時間帯の激しい混雑は想像に難くないでしょう(←数値がわからないときのゴマカシ方)。

 以上を見て、わかったこと、そうなのです。データというものは、いくらでも都合良く操作出来るのです。みなさん、何事も見かけにだまされることなく裏側に隠れている真実を見抜く目が必要なのです。と、いかにも的でデータを締めくくります。

チェーン店 チェーン店

チェーン店

チェーン店

チェーン店

チェーン店
もちろん三大巨頭だけがチェーン店ではありません。ほかにもいろいとありますが、それはご自分の目で確認を(←めんどくさいときの定番)。

 と、今回は幻立喰・ソがひとつもでてこないという、とんでもない展開となりましたが、盆暮れ関係なくがんばっているわりには、ないがしろにしている(当コーナーで)三大チェーン店に罪滅ぼしと、チェーンとはいえあまたの幻立喰・ソ化した店舗に、哀悼を込めてご挨拶に代えさせていただきます。合掌。

*   *   *   *   *

●立喰・ソNEWS 2014 
おそるべし坂崎師匠・2!

花の銀座のみゆき通り。なぜみゆき通りというのかはおじいちゃん、おばあちゃんに聞いてみよう。そのみゆき通りからちょっと入ったところにあるのが、ツウな人に大好評のT。まさかこんなところにという隠れ家的な立喰・ソです。というか呑み屋さんとの二毛作店です。一見さんにはちょっと敷居が高いイメージがあって、しかも銀座なんてまず御用がないので未訪問なのですが、定休日なのは承知でとりあえず、お店だけでも見に行こうと、行ってみたら……なんとまあ、ここの店頭に坂崎師匠の名著が。師匠はどんだけリスペクトされているのでしょう! コウイフ人ニワタシハナレナイ……(←前回参照)。

T T
定休日なのでシャッターは降りています。その左手のお品書きの額縁へと目を移せば!(2014年8月撮影)

バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。現在600店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べるだけで、たいして役に立たない。立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。


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